声が聞こえる 成績優秀なAちゃんの不思議
人間の能力には限界がない。看護師をやっていると時々そう感じることがあります。
余命2カ月といわれた患者さんがご家族の支えがあって半年も生きられたり、歩くまで回復するのは難しいとみられた患者さんが、歩行器で歩けるようになったり。
意志の力ってすごいと思うんです。さらに、それとは別に何か不思議な能力があるひともいるようです。
【本を読むのが早かったバスケ部のAちゃん】
高校時代の友人に、本を読むのがめちゃめちゃ早い子がいました。別にインドア派というわけでもなく、部活はバスケ部。たまに放課後とか図書室で一緒に自習していると、その子(めんどうなので、Aちゃんにします)がパラパラ本を読んでいる。
すごい早いの。といっても速読のスピードではなくて、ちゃんと活字を読んでいる早さなんですけどね。少なくとも私の2倍ぐらいのスピードで読み続けている。あんまり不思議でいちど聞いてみたんです、早く読む練習をしたの?って。
そしたらAちゃんから衝撃の一言が。
「だって、声が聞こえるじゃん」
声って何!?
【脳内朗読の仕組みはこれ】
「本を読むでしょ、読んでいると朗読しているみたいな声が聞こえるじゃん」
イヤイヤ、そんなの聞こえないよ(笑)。そういったらAちゃんのほうが不思議そうな顔をして
「え、みんな聞こえないの?」
うーん。よくわからないけど、たぶん聞こえていないんでしょう。っていうか、聞こえるアナタがすごいよ、Aちゃん。
よく聞いてみると、どうも仕組みとしては、目が活字を見る→頭の中で音声として変換される→脳内で声が聞こえる、ということらしい。
ありえない…仕組みとして分かっても、実感できない。Aちゃんにもそれ以上は説明できないらしく、気がついたらその独特の読書スタイルだったらしい。それ以外の読み方知らないって。
世界不思議人間みたいだよ、Aちゃん(笑)。
【自動筆記の仕組みはこれ】
おまけに、この能力は書くときにも発揮されるようでした!
Aちゃんはレポートを書くのがめちゃくちゃ早かった。書く前にいろいろ調べて、あーだこーだと考えるあたりまでは、他の人と変わりません。
私もよく、一緒に図書室で調べたし。本を持ってきて、「コレ使えるよね」といってはいい文章を抜き書きする。
Aちゃんの場合はそこからがちがうんです。私なんかが抜き書きした文章をどう使おうかともたもたしているうちに、Aちゃんはやおら書き始める。
書き始めたら、もう止まらないの。ずーっと書いている。止まる時は、書き終わったときなんです。これってすごくないですか!?
Aちゃんすごいよ、というと、またキョトンとする。
「だって、声が聞こえるじゃん」
だから、私には聞こえないの。ってか、たぶん世界中でそんな声が聞こえるのは数人しかいないと思う(笑)。その声を聞きたい、ぜひとも聞きたい~。
おそろしいことに、Aちゃんの場合は小論文などもほぼ自動筆記なのです。データやテーマ、書くべき内容を頭の中に入れておけば、それで準備完了。あとは脳内の声がしゃべるものを、そのまま書き写しているだけなんだそうです。
受験地獄のど真ん中にいた私は、どれほどAちゃんの脳みそが欲しかったことでしょう。
【書くって大変】
文系科目において、圧倒的な学力を示したAちゃん。あわせて理系も出来たので、学校内でも超優秀な生徒でした。
成績順位表でもいつも10位以内。よくできたAちゃんは、その後有名国立大学に難なく合格しました。あたりまえですよね。
いっぽう、文系も理系もそこそこだった私はなんとか看護師になりましたが、今でもレポートを書くのに四苦八苦。例文集や文献と首っぴきになって苦労しております。