お母さんといっしょ
看護師として働いていると、患者さん本人だけでなく、家族の人ともかかわりを持つことがあります。患者さんとの関係よりはずっと希薄な関係なのですが、それでもいろいろなことがわかります。
家族どうしの関係性って、意外なところで見えてしまうもの。ここの家族はこういう考え方なんだとか、こういう方針なのね、ってこと。家族それぞれに違いがあって面白いんです。時にはちょっと、気になることも。
【待合室で家族が見える】
たとえば、外来で子供さんが来ることがあります。たいていお母さんが付き添ってきますが、ここがもう、おもしろい。高熱でぐったりしている子供を抱きかかえるようにして座っているお母さんもいれば、熱があっても走り回る子(子供って、熱に強いものです)を豪快に叱り飛ばしているお母さんまで。普段の生活が、見えちゃいますよね(笑)。
元気すぎる子供だと、お母さんは診察室に入った時から平謝りです。「すいません、こんなに元気な子を連れてきちゃって」とか、おっしゃってますね。いいんですよ、だってこの子、39度もあるじゃないですか(笑)。
【ママと子供のギャップ】
そうかと思えば、ものすごい大人びた小学3年生もいます。診察室に入るときも「失礼します」といい、出るときも「ありがとうございました」。しつけが行き届いているんですね。
そんな子供のお母さんが、良いママタイプの人かと思えば、そうとも限らない。ちょっとお水系のど派手な服を着ていたり、爪が全部ネイルでキラキラしていたりするんです。人は絶対に見かけで判断をしちゃいけないなあと思いますね。
ほかにも「ババア、うるせえよ」「お前こそ、うるせえよ」と怒鳴りあっている親子がしっかり手をつないでいるなんてシーンもあります。
【先回りママ】
最近ちょっと気になるのが、子供の言いたいことを先回りして言ってしまうお母さんですね。とくに10歳以下の男の子ママに多い気がします。
ドクターが子供に話しかけているのに、お母さんが先に病状を説明してしまう。10歳くらいになれば自分の状態は説明できるはずなので、ドクターは本人の話を聞きたいのです。もちろん後からお母さんの話も聞きます。本人が言うことと、周りからみた病状が食い違うことがあるので、できるだけ両方から話を聞きたいんですね。これはどのドクターでも同じことです。
ところが、先回りするお母さんは全部話してしまう。こうなると子供に聞いても、「お母さんが言ったとおりです」としか言わないのです。
なかには子供が話そうと口を開けているのに、上からかぶせて話してしまうお母さんもいますね。子供の状態については、確かにお母さんが一番よく分かっているのですが、それにしてもドクターと子供が話す機会くらいは与えてほしいなあと思います。
【納得です】
先回りママは、不思議と女の子のお母さんにはあまり見られない傾向です。たまたま私が遭遇するケースが男の子ママばかりだったというのはあるかもしれませんが。わりと女の子のママは割り切っている人が多いみたいですね。
あるときどうしても注射をイヤがる女の子が、処置室で暴れたことがありました。するとそこでお母さんが一喝。「人生そういうこともある!」。なるほどなあと処置室にいた全員が、わけもなく納得した瞬間でした。ほんと、その通りですよね(笑)。